
2019年5月にひらかれた交渉が事実上決裂したことから、両国の報復関税闘争はさらに激しさを増し、いまだに問題の決着がついていません。
6月のG20でトランプ大統領は「第4弾の追加制裁はしない」と表明した模様ですが、とはいえ、米中貿易戦争の行方はまだまだ不透明であると言わざるを得ません。
そこで今回は、長引く米中貿易戦争の追加関税の内容を振り返りながら、その規模や日本への影響について解説します。
対中追加課税第3弾の内容
2018年9月、アメリカは知的財産権の侵害を根拠に第3弾として年間輸入額2000億ドル相当の中国製品の関税率を10%に引き上げました。
その品目は、産業機械や電子部品、プラスチック製品や革製品など、全5745品目です。
この追加関税に対して、中国は600億ドル規模の米国製品5207品目を10%に引き上げを決定。2019年5月にはアメリカが10%の追加関税率をさらに25%に引き上げたことで、中国も6月に関税率を25%にまで引き上げました。
第4弾の規模は?
アメリカは、第4弾としてこれまで制裁の対象でなかった3000億ドル相当の中国製品についても関税率を25%に引き上げることを予定していました。
ただ、今までのように、実体経済にあまり大きく影響を与えない品目が対象だったリストと違い、第4弾リストにはスマホなどの携帯電話やPC、玩具や衣類などが含まれるため一般市民に直接大きな影響を与えるとして批判の声が目立っています。
米中貿易戦争関連の出来事(2019年4~6月)
2019年4、5,6月に起こった米中貿易戦争関連の出来事をまとめていきます。
出来事 | |
4月1日 | 中国公安部、国家衛生健康委員会、国家薬品監督管理局は、麻薬性鎮痛薬フェンタニル類物質の規制を強化することを公表。 |
5月8日 | 中国国務院はソフトウェア開発企業やIC設計企業の企業所得税の減免政策の延長を決定。 |
5月10日 | 貿易交渉会合で米中合意ならず。アメリカが対中輸入品第3弾(2000億ドル相当)の追加関税率を25%に引き上げる |
5月13日 | 中国、対米輸入品第3弾(600億ドル相当)の報復関税の引き上げを発表。 同時に、対米関税の適用除外制度に関する手続きも発表。 |
同日 | アメリカが対中追加関税措置として第4弾リスト(3000億ドル相当)を公表。 これによりほぼ全ての中国製品が対象となることに。 |
6月1日 | 発表通り、中国が対米輸入品の追加関税率を25%に引き上げを実施。 |
6月6日 | アメリカは対中輸入品第3弾に関する品目別の適用除外申請の詳細を発表。 |
6月19日 | <アメリカは対中輸入品第3弾に関する品目別の適用除外申請の詳細を発表。/td> |
ファーウェイとの取引を停止した企業
トランプ氏がファーウェイとの取引を禁じる制裁措置を出したことから、世界でファーウェイとの取引を停止する企業が増えています。
・Google
・アルファベット
・ルメンタム・ホールディングス
・コルボ
・アナログ・デバイシズ
・インファイ
・アーム
・クアルコム
・ザイリンクス
・インテル
・ブロードコム
・パナソニック
など。
現在、Googleなど大手企業や半導体メーカーなどが取引を停止していますが、ファーウェイ排除のの動きは今後さらに強くなる可能性があります。
日本への影響
世界経済に占める割合は、アメリカが約24%以上、中国が約16%、と合わせて約4割以上を占めるため、2カ国だけで世界のGDPを0.2~0.4%下げることが予想されています。
こうしたなか、米中貿易戦争がさらに深刻化すれば、輸出額の約4割が中国、アメリカ向けとなっている日本の輸出入にもさまざまなしわ寄せが来る可能性が考えられます。
一方で、恩恵を受ける企業もあります。たとえば、ファーウェイショックでチャンスが回ってくる日本企業といえばSonyやNEC、なかでもとくにチャンスなのはシャープです。
すでにシャープは、これまでファーウェイの代名詞ともいわれていたモバイルWi-Fiルーター事業に参入、今秋からdocomoで発売予定となっています。
シャープの親会社は鴻海精密工業なので、もちろん中華圏の販売ネットワークも十分。ファーウェイの得意分野をそのままごっそりと網羅できるシャープが、今後シェアを拡大していく可能性は高いでしょう。
米中貿易戦争まとめ
アメリカによる追加関税、対抗する中国の報復関税という負のスパイラルは、2017年から続いており、摩擦はエスカレートするばかりです。
このまま経済規模世界第1位と2位の対立が激化し続ければ、世界経済の悪化は免れられないでしょう。
引き続き、株式市場への影響とともに動向を注視する必要がありそうですね。