
フランスでは2018年12月現在でも、シャンゼリゼでの暴動や像を破壊するなど激しい大規模なデモが行われています。
世界各国のメディアで取り上げられているデモの発端が『燃料税の増税』であることは、よくニュースで流れていますよね。
しかし、本当に燃料税の増税だけでここまで大規模なデモに発展してしまったのでしょうか。
そこで今回は、フランスで大規模なデモがなぜ起きたのか、その理由や参加者の特徴についてわかりやすくまとめていきます。
デモはなぜフランスで起きたのか?
フランスは革命の国ともいわれるほど、その歴史は多くの革命とともにつくられたものです。とくに今回の大規模なデモは、高度経済成長期のなか、格差の拡大に不満をもったパリ市民や労働者が当時のド・ゴールド政権に抗議デモを行った『5月革命』の再来ともいわれています。
フランスでなぜこれほどまで大規模なデモが起こったのか、その理由についてみていきましょう。
燃料税とは
今回の抗議デモの引き金となったのが、『燃料税』の増税です。
フランスでは、ガソリンや軽油価格の高騰に加えて、フランス社でよく使われるディーゼル燃料の料金は1年で23%ほど上がっていました。
にもかかわらず、マクロン政権が地球温暖化防止のためにさらなる燃料税値上げを検討したことで、生活上自動車に頼らざるを得ない人々がたまらなくなったのです。
デモの真の要因はなにか?
日本では、このデモを燃料税の増税に抗議するデモと報道していますが、これは単なるきっかけにすぎません。
今回のデモの真因は、マクロン政権の富裕層優遇政策による国民間の『格差の拡大』です。
マクロン氏は、富裕層向けの富裕税の廃止や法人税の減税などをする一方で、
・社会保障税の増税
・住宅手当の削減
・集団解雇手続きの簡素化
・不当解雇保障額の上限設定
・労働者による解雇不服申し立て期間の短縮
このような労働者や庶民に厳しい政策を次々と行っています。そのため、現在フランスの失業率は9%後半。25歳未満だと22%超の高い失業率となっているのが現状です。
緊縮財政のもと、庶民ばかりに負担が大きくなる現在のフランスに対して労働者や庶民たちの不満が爆発した結果が今回のフランスのデモなのです。
デモ参加者の特徴
デモの参加者の特徴は、『ジル・ジョーヌ』といわれるイエローカラーのベスト。このベストは、工事現場などでよくある安全ベストで、労働者を象徴するものです。
11月17日にパリで始まり、フランス全土にまで広がった抗議デモですが、実は特定の派閥やはっきりとしたリーダーもいません。にもかかわらず、フランス全土で行われたデモには13万6000人ほどの人が参加しました。加えて、デモを支持する人々はフランス人全体の70%にものぼるといわれています。
このデモの参加者の多くは地方の低~中所得層の労働者であり、右派左派の垣根を超えて反マクロン政権という立場で一致してデモをしています。今回のデモは、いわば『庶民VSエリート』の闘争といえるでしょう。
国民のSNS上の反応
今回のデモの参加者は支持する政党が一致しているわけではなく、FacebookなどSNSでの呼びかけに応じた労働者や庶民がデモを起こしているという特徴があります。
ある一般女性が燃料高騰に不満を爆発させるビデオメッセージを投稿したところ、Facebookでは瞬く間に視聴回数が600万回以上にのぼったそうです。このようなSNSでの呼びかけは、デモの実施を誘う流れを生み出し、一気にフランス国民に拡大しました。
またフェイクニュースが意図的に情報をかく乱させてデモの暴動化を助長した、という見方もあります。SNSを媒介にした大規模デモはフランス国内でも初めてで、SNS上ではフランス政府の情報戦争の敗北を示唆する声もあがっています。
まとめ
事態収拾のため、フランス政権は燃料税増税の延長や最低賃金の引き上げを発表しましたが、これだけではデモを鎮静化することは難しいかもしれません。
実際に現在拡散されているTwitterには、「2020年の燃料税はどうなるのか」「増税がなくなっても私たちの生活は苦しいままだ」などの声が上がっています。
フランスの今後の展開に注目が集まっています。