
年々問題視されている「日本の教育格差」。
「9年間の義務教育から多くの人が高校進学するし、日本で格差なんてあるの?」と疑問に思う人もいるでしょう。
ですが、日本の現状をみると明らかに本人の努力ではどうしようもない格差が生まれており、結果的に問題の深刻化を招いています。
そこで今回は、現在の日本の実情を正しく理解するために、年々深刻化する「教育格差」の原因や背景についてわかりやすく解説します。
教育格差と学歴格差の違い
幼少期に受けた教育の違いから生じるのが「教育格差」です。
幼少期の環境は親の学歴や世帯収入、職業などが大きく関わっていきます。
そして、この「環境」による教育の成果である学歴に生じることを「学歴格差」といいます。
たとえば、親が高学歴・高収入だと子どもは大卒になり、正規雇用を得るという傾向があります。
一方、いくら子供が優秀でも、親自身が高卒で大学に通うメリットを感じないという家庭なら子どもも高卒になりやすいという傾向があります。
かんたんに言えば、幼少期の生まれが教育格差を生み、そして親の価値観や家庭の差が学歴格差を生み出すのです。
教育格差が生まれる具体的要因
それでは、実際に教育格差が生まれる要因にはどのようなことが関わっているのでしょうか。
教育格差が生まれる背景には、
・教育費に対する自己負担の多さ
が挙げられます。
家庭の経済格差
まずあげられることは、家庭の経済格差についてです。
子どもの学力は10歳を境に急激に差が生まれる傾向があり、この理由のひとつに「中学受験」があります。
(参照:日本財団(2018)家庭の経済格差と子どもの認知能力・非認知能力格差の関係分析 https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2019/01/wha_pro_end_07.pdf)
中学受験をするための勉強は知識だけにとどまらず、そこから深く考え込む作業が欠かせません。
一方、学校の授業中心だといろいろなレベルの子どもに教えるため、勉強は最低限に留まります。
そうなれば、当然受験を目指す子供と目指さない子供では学力に大きな差が生まれてしまいます。
つまり、日本の教育格差は、「学習塾」などに通える層と通えない層の間に生み出されているのです。
現在、日本において子どもの貧困率(17歳以下)は13.5%、おおよそ7人に1人の計算で子どもが貧困状態に陥っています。
(参照:厚生労働省 2019年国民生活基礎調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/03.pdf)
貧困であることは、 子供からさまざまな学習する機会を奪うことにつながります。
学習の機会に恵まれなかったことで学力が低下した子供は、所得の高い職業につきにくくなり、安い賃金の職業につかざるを得ません。
結果的に、そのまま貧困が引き継がれていくというわけです。
教育費に対する自己負担の多さ
また、教育費の自己負担率が高い点も格差を生む背景のひとつです。
経済協力開発機構(OECD)先進国で比較した2016年において国内総生産に占める公財政教育施設(小学校から大学までの教育機関)に対する公的支出の割合を見ると、35カ国中日本は最下位。
(参照:日本日経新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49648260Q9A910C1CR8000/)
このことから、日本では子供の教育費の自己負担が一般的となっていることがわかります。日本では自己負担率が高いために、世帯の収入状況が教育に大きく関係するのです。
一方、ノルウェーでは小学校から大学卒業までの学費は公立なら無料で、スウェーデンでは公立大学だけでなく私立大学でもほとんど学費はかかりません。
なぜこんなにも日本の教育と差があるのかというと、教育を無料にすることで「社会を支える自立した市民を育てる」という考えが根付いているからなのでしょう。
教育格差の最大の原因とは?日本の現状や学歴格差との違いについてわかりやすく解説|まとめ
日本で教育格差が生まれる共通の問題点に、「どんな家に生まれたか」ということが大きく関わってきます。
親の経済的地位や資産の差が教育の質につながり、子どもがさらに格差を引き継いでいく、そんな負の連鎖が続いてしまっているのです。
負の連鎖を終わらせるためには、「教育や体験学習の機会」が不可欠です。
ひとりの大人として子どもたちの未来のために何ができるのか、あらためて考えてみてはいかがでしょうか。