
2018年12月6日についに可決された改正水道法。この改正には、水道事業が民営化することも含まれています。水道が民営化されると私たちの生活はどのように変化するのか、心配になりますよね。
そこで今回は、水道法を改正した理由や特徴、世界の民営化事情についてわかりやすくご説明します。
なぜ水道法の改正に踏み切ったのか
2018年12月6についに可決された改正水道法。ですが、なぜこのタイミングで水道法の改正が必要になったのでしょうか。
日本政府が改正に踏み切った理由は3つあります。
・少子化や過疎化による水道事業の収益の低下
・水道管の老朽化
・人材不足
本来なら事前に水道料金の値上げや計画的な水道管の更新する必要がありました。
しかし、水道事業の収益の低下続き、かつ、人材不足の市町村だけではどうすることもできず、現在では全国約9割の水道管の老朽化を放置している状況に陥っています。そこで、更新のための費用負担をできるだけ回避するため、今回現在の水道法を改正することに踏み切ったのです。
改正水道法の特徴
今回の改正水道法の大きな特徴は、『コンセッション方式』を採用していることです。
コンセッション方式とは、今まで水道事業を経営してきた市町村などの自治体が浄水場などの水道施設を所有して、水道業者としての位置づけは維持しつつ、運営権を民間事業に売るというもの。
この方式を採用することで自治体の財源が減ることはありませんが、利益を最優先する民間企業に運営権を渡すことで水道料金の値上げや水質・サービスの低下を危険視する声があがっています。
水道を民営化した世界の事例
日本以外で水道が民営化している国はいくつかありますが、世界の事例をみても成功したところはほとんどありません。
たとえば、フランス。
フランスで水道事業を民営化していた期間は1985年から30年です。2つの企業によって給水事業が行われていて、約5倍に値上げした水道料金や遅延する漏水工事に国民の不満が爆発。2010年には、再公営化しました。
ほかにも、貧困世帯への給水停止によって深刻な生活破壊をもたらした実例としてマニラとボリビアが有名です。1997年に民営化したマニラでは、海外企業が参入し、水質が向上されていないにもかかわらず、水道料金は4倍以上に値上げ。低所得者は水道が利用できない状態にまで陥りました。
その2年後に民営化したボリビアでも、やはり海外企業の参入によって水道料金が跳ね上がった結果、民衆の不満が爆発。およそ200人もの死傷者が出る紛争にまで発展しました。
水道料金高騰の可能性
結論から言うと、水道料金があがる可能性はとても高いでしょう。
さきほど問題視した、水道管の更新は早急に始めるべき課題です。
現在の水道管の多くは1960年~1970年代に設置されたもので、それらの耐用年数は40年ほど。しかし、水道管の約1割が耐用年数をこえたといわれた2013年を過ぎてなお、全国にはいまだ更新されていない水道管が残されており、水漏れや破裂事故の件数は年々増えています。また、水道管の内側にはサビがびっしりついていることも多いため、衛生上にも問題があります。
もちろん、早急に更新する必要があるのですが、水道管の交換には1kmあたり約1億円かかるといわれています。しかし、現在市町村が運営する水道事業の約3割は赤字財政の状態。今回の改正には、民営化させて水道料金を値上げさせることで費用を捻出するという狙いが含まれていると考えるのが妥当でしょう。
まとめ
世界には民営化したことによって紛争が起こった事例もありますが、今回の水道法の改正では単純にすべてを民間企業にうつすというものではありません。そのため、海外の失敗例が多いからといって日本でも失敗するとは言い切れませんし、官民一体となって水道事業を運営することで、現在の水道問題の解決策につながるかもしれません。
はたして今回の民営化は、低迷している日本の水道事業のカンフル剤になるのでしょうか。
私たちの命の源ともいえる水道のあり方について、今後も注目していく必要があるでしょう。